2016年度研究発表・公開講座

2016年度開催の研究発表・公開講座

2017-03-26
加川主任研究員が日本薬学会第137年会にて発表しました。
2017-03-17
木下専門研究員が当院の健康教室で講演しました。
2017-03-16
山内副所長が第42回日本脳卒中学会学術集会で発表しました。
2017-03-10
谷垣専門研究員らが執筆したNotch シグナルによるドーパミン反応性制御の論文が、Translational Psychiatry誌に掲載されました。
2017-03-02
山内副所長らが執筆した、進行性大脳皮質神経細胞障害に対するバイパス手術の効果に関する論文が、American Journal of Neuroradiology誌にonline掲載されました。
2017-02-11
加川主任研究員がPET化学ワークショップ2017にて講演しました。
2017-02-10
第53回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。テーマは診断支援用人工知能です。
2017-01-25
西村専門研究員が哺乳類聴神経に発現する転写因子群を解析した研究論文を発表しました。
2017-01-18
加川主任研究員らがアミノ酸PET製剤MeAIBの基礎実験に関する原著論文を発表しました。
2016-11-12
山内副所長が第59回日本脳循環代謝学会学術集会で発表しました。
2016-11-04
加川主任研究員が第56回日本核医学会学術総会にて発表しました。
2016-10-15
第5回びわ湖細胞病理テュートリアルを開催しました。
2016-09-06
加川主任研究員が京都大学等と共同で、有機アニオントランスポーターの機能解析を目的とするPET製剤に関する原著論文を発表しました。
2016-06-27
第52回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。
2016-06-21
当センター画像研究部門の開発した日本発のアミノ酸系PET製剤MeAIBの臨床診断に関する原著論文が英文医学誌 Annals of Nuclear Medicineにonline掲載されました。
2016-05-06
山内副所長らが執筆した進行性大脳皮質神経細胞障害に関する論文が Stroke 誌にonline掲載されました。
2016-04-16
山内副所長が第41回日本脳卒中学会総会で発表しました。

2016年度に開催した研究発表・公開講座の詳細

加川主任研究員が日本薬学会第137年会にて発表しました。

開催日 2017年3月26日
学会名 日本薬学会第137年会
開催地 宮城県仙台市
演題 Benzyl [18F]Fluoroacetateのone-pot合成法の開発
演者 加川信也
共同演者 水間広、矢倉栄幸、西井龍一、東達也、山内浩、高橋和弘、尾上浩隆、川井恵一
要旨

我々は、Acetateを[18F]標識したPET診断薬[18F]Fluoroacetate ([18F]FACE)に関して、グリア細胞との関係について着目し、ラット脳虚血-再灌流モデルを用いて検討を行い、虚血性脳血管障害の予後判定を目的とした画像診断法の開発を目指している。

[18F]FACEの合成に関しては、これまでに、一般的な合成法であるオンカラム加水分解法、臨床応用へ向けてより簡便で安定なtwo-pot蒸留法、さらに新しい固相抽出技術を利用したone-pot蒸留法など、種々の合成法を確立してきた。現在、脳への移行性を高める目的で[18F]FACEのベンジルエステル体であるBenzyl [18F]Fluoroacetate (Benzyl [18F]FACE)に着目し、合成法を検討している。今回、HPLCの分離精製を省略した最も簡便な方法であるone-pot蒸留法と逆相カラムによる固相抽出法(目的物を逆相カラムで分離捕集して水洗いした後、少量のエタノールを含む水溶液でBenzyl [18F]FACEを溶出)を組合せた新しい合成方法について検討したので、その結果を報告する


木下専門研究員が当院の健康教室で講演しました。

発表日 2017年3月17日
学会名 平成28年度健康教室
開催地 滋賀県立成人病センター研究所講堂
発表形式 口演
演題 遺伝子から見た病気の予防
演者 木下和生
要旨 ゲノム情報を病気予防に役立てる最新の研究を紹介し、比較的若い時にがんを発症する遺伝性腫瘍症候群について解説した。
配布資料 配布資料(PDF)
動画 Youtube(動画)

山内副所長が第42回日本脳卒中学会学術集会で発表しました。

発表日 2017年3月16日
学会名 第42回日本脳卒中学会学術集会
開催地 大阪市
発表形式 シンポジウム口演
演者 山内浩
演題 アテローム硬化性頭蓋内動脈閉塞性疾患患者における脳循環代謝評価の意義
目的 アテローム硬化性頭蓋内脳主幹動脈閉塞性疾患患者において,PETを用いた脳循環代謝評価を行ない,1)脳循環障害と脳卒中発生の関係について,2)虚血性脳病変の発生機序について検討する.
方法1 頭蓋内内頸動脈あるいは中大脳動脈に狭窄または閉塞を有する,無症候性患者51例(閉塞9例)と症候性患者88例(閉塞34例)を,貧困灌流(酸素摂取率増加,血流量/血液量低下)あり群となし群に分類し,2年間の脳卒中発生率を比較した.
結果1 無症候患者における貧困灌流の頻度(1/51)は症候性患者(12/88)に比べて低かった.バイパス手術は無症候2例(貧困灌流あり1例)と症候性19例(貧困灌流あり8例)に行われた.2年間に,無症候患者では同側脳梗塞の発生はなかったが,症候性患者5例が同側脳梗塞を再発した(内科治療群で貧困灌流あり2例,内科治療群で貧困灌流なし2例,外科治療群で貧困灌流なし1例) .内科治療群118例を対象としたとき,貧困灌流のみが同側脳梗塞発生の予測因子であった.
結論1 貧困灌流検出により脳梗塞再発高リスク群を同定できる.無症候性患者では貧困灌流の頻度は低い.
方法2 中大脳動脈に狭窄または閉塞を有する患者100例を対象とし,MRI にて脳梗塞のタイプ(皮質境界領域梗塞,その他の皮質梗塞,深部境界領域梗塞,深部穿通枝梗塞,及び髄質動脈梗塞)を評価した.62例で中枢性ベンゾジアゼピン受容体(BZR)密度を求めた.
成績2 深部境界領域梗塞のある群(18名)では,ない群と比較し,酸素摂取率が増加しBZRが低下していた.深部境界領域梗塞は,酸素摂取率増加及びBZR低下と独立して関連していた.
結論2 血行力学的機序により,深部境界領域梗塞と皮質神経細胞障害が生じる.

谷垣専門研究員らが執筆したNotch シグナルによるドーパミン反応性制御の論文が、Translational Psychiatry誌に掲載されました。

統合失調症は多因子遺伝病であり、遺伝学的解析によって統合失調症発症脆弱性遺伝子の候補がいくつか見出されているが、その遺伝子変異が統合失調症にどのように関与するか未だ解明されていいません。 Notchシグナルに関与する遺伝子群も統合失調症との関与が報告されています。 本研究では、Notch シグナルが神経細胞特異的に欠損したマウスを樹立し、Notch シグナルが神経細胞で欠損するとドーパミンに対する反応性が亢進し、ドーパミン依存性報酬学習に障害がでることを示しました。統合失調症にドーパミン異常が関与していることを考えると非常に興味深い結果です。本結果より、Notchシグナルの異常により、統合失調症の陽性症状が修飾を受ける可能性が示唆され、Notch シグナルを標的とした治療の可能性も検討できるのではと期待されます。

掲載日 2017年3月10日
掲載雑誌名 Translational Psychiatry
著者 Michihiro Toritsuka, Sohei Kimoto, Kazue Muraki, Motoo Kitagawa, Toshifumi Kishimoto, Akira Sawa and Kenji Tanigaki
標題 Regulation of Striatal Dopamine Responsiveness by Notch/RBP-J Signaling
要旨 Dopamine signaling is essential for reward learning and fear-related learning and thought to be involved in neuropsychiatric diseases. However, the molecular mechanisms underlying the regulation of dopamine responsiveness is unclear. Here we show the critical roles of Notch/RBP-J signaling in the regulation of dopamine responsiveness in the striatum. Notch/RBP-J signaling regulates various neural cell fate specification, and neuronal functions in the adult central nervous system. Conditional deletion of RBP-J specifically in neuronal cells causes enhanced response to apomorphine, a non-selective dopamine agonist, and SKF38393, a D1 agonist, and impaired dopamine-dependent instrumental avoidance learning, which is corrected by SCH23390, a D1 antagonist. RBP-J deficiency drastically reduced dopamine release in the striatum and caused a subtle decrease in the number of dopaminergic neurons. Lentivirus-mediated gene transfer experiments showed that RBP-J deficiency in the striatum was sufficient for these deficits. These findings demonstrated that Notch/RBP-J signaling regulates dopamine responsiveness in the striatum, which may explain the mechanism whereby Notch/RBP-J signaling affects an individual’s susceptibility to neuropsychiatric disease.

山内副所長らが執筆した、進行性大脳皮質神経細胞障害に対するバイパス手術の効果に関する論文が、American Journal of Neuroradiology誌にonline掲載されました。

これまでに、アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者では、脳循環障害により大脳皮質神経細胞が症状なく死んでいくことをPETを用いて明らかにしてきました。バイパス手術は、脳循環障害を改善し、神経細胞障害を予防する可能性があります。本研究では、脳循環障害を有し、経過観察中に脳梗塞を生じなかった例で、神経細胞障害の進行の程度をバイパス手術群と内科治療群で比較検討しました。しかし、バイパス手術群のほうが神経細胞障害進行の程度が大きく、現状では、有効性は支持されませんでした。本結果から、バイパス手術による機能予後改善のためには、神経細胞障害の発生を考慮することが重要と考えられました。

掲載日 2017年3月2日
掲載雑誌名 AJNR Am J Neuroradiol
http://www.ajnr.org/content/early/2017/03/02/ajnr.A5110.full.pdf+html
著者 Hiroshi Yamauchi, Shinya Kagawa, Yoshihiko Kishibe, Masaaki Takahashi, and Tatsuya Higashi
表題 Progressive Cortical Neuronal Damage and Extracranial-Intracranial Bypass Surgery in Patients with Misery Perfusion

加川主任研究員がPET化学ワークショップ2017にて講演しました。

開催日 2017年2月11日
学会名 PET化学ワークショップ2017
開催地 神奈川県三浦郡
演題 ループ標識法に使用する滅菌スパイラルチューブ
演者 加川信也
要旨 PET化学ワークショップ2017において、加川主任研究員が、「ループ標識法に使用する滅菌スパイラルチューブ」と題して、アルツハイマー病での脳βアミロイドのゴールドスタンダードなイメージング剤である[11C]PiBを例に挙げて、カセット式自動合成装置を用いたループ標識法による合成法を詳細に説明しました。従来のバブリング標識法よりも合成の準備・後片付けが非常に簡便化され、今後、更なる普及が望まれる合成法であることを紹介し、情報交換会やフリーディスカッションでは活発な意見交換がされました。

第53回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。テーマは診断支援用人工知能です。

開催日 2017年2月10日(金)18時00分~19時00分
場所 滋賀県立成人病センター研究所講堂
演題 診断支援用人工知能の最前線と将来像
演者 奥村 貴史 先生(国立保健医療科学院 研究情報支援研究センター 特命上席主任研究官)
要旨 ⼈⼯知能技術が発展し、Facebookの⾃動顔認識等、驚くほど⾼性能なアプリケーションが登場しています。今後、こうした情報処理技術の発展を臨床へと応⽤することにより、医療従事者の診療負担を軽減する医療⽤情報システムの実現が期待されます。このセミナーでは、そうした医療⽤⼈⼯知能の⼀つである診断⽀援システムについて紹介します。
対象 医師。講演後のアンケートにご協力お願いします。アンケートへ答えていただいた方にAI診断補助システムのアカウントをお渡しします。
定員 100名(事前申込みが必要です)
会費 無料
申込方法 参加をご希望の方は E-mail または FAX でお申し込み下さい。その時、タイトルを「研究所セミナー参加申込み希望」とし、氏名(ふりがな)・所属・連絡先の住所・電話番号・FAX番号・E-mail アドレスをお書き添え下さい。
連絡先 TEL: 077-582-6034, FAX: 077-582-6041,
kenkyu@res.med.shiga-pref.jp
世話人 真鍋 俊明(総長)
案内チラシ チラシ (PDFファイル)

西村専門研究員が哺乳類聴神経に発現する転写因子群を解析した研究論文を発表しました。

滋賀県立成人病センター研究所 西村幸司専門研究員らは、胎生・成獣マウス一次聴神経に発現する転写因子群を詳細に解析し、アメリカの科学・医学雑誌である『プロスワン誌』に論文を掲載しました。トロント大学耳鼻咽喉科 AlainDabdoub准教授、野田哲平研究員らとの共同研究グループの成果です。

掲載日 2017年1月25日
要旨

哺乳類一次聴神経(ラセン神経節細胞)は、蝸牛有毛細胞と脳幹に位置する蝸牛神経核細胞を接続し、音情報を耳から脳に伝達する上できわめて重要な役割を果たします。一次聴神経は耳胞の神経感覚前駆細胞領域から遊走した神経芽から発生し、生後音刺激に反応するまで成熟を続けます。哺乳類一次聴神経は内有毛細胞とシナプス結合する1型ラセン神経節細胞と外有毛細胞とシナプス結合する2型ラセン神経節細胞の2種類に分類されます。一次聴神経を取り囲む神経堤由来のグリア細胞は発生時にラセン神経節にむけて遊走します。発生と分化に重要な役割を果たす既知の転写因子群に加えて、今回われわれはSox2, Sox10, Gata3,MafbおよびProx1の時空間的発現パターンを遊走中の神経芽から成体にかけて解析しました。Sox2とSox10は胎生10.5日マウスの神経感覚前駆細胞に発現しますが胎生12.5日目までに発現は減弱します。しがしながら、出生前後の聴神経においてSox2の発現は再上昇しました。また、ラセン神経節グリア細胞においては胎生・生後ともSox2とSox10の双方の発現を認めました。Gata3とProx1は当初全ての一次聴神経に発現しますが、成熟と共にGata3は2型ラセン神経節細胞にのみ発現し、Prox1は1型ラセン神経節細胞にのみ発現することを見いだしました。さらに2型ラセン神経節細胞にPeripherin陽性あるいは陰性の2つの亜分類が存在することを報告しました。これらの結果はSox2, Gata3およびProx1が哺乳類一次聴神経の発生のみならず成熟にも重要な役割を果たすことを示唆します。

掲載雑誌名 プロスワン誌
著者 Koji Nishimura, Teppei Noda, Alain Dabdoub
表題

Dynamic Expression of Sox2, Gata3, and Prox1 during PrimaryAuditory Neuron Development in the Mammalian Cochlea(「哺乳類蝸牛の一次聴神経発生におけるSox2, Gata3およびProx1の動的発現」)
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0170568

哺乳類一次聴神経発生と成熟におけるSox2, Sox10, Gata3, Prox1およびPeripherinの発現 成獣ラセン神経節におけるPeripherinとGata3の局在

図1(左):哺乳類一次聴神経発生と成熟におけるSox2, Sox10, Gata3, Prox1およびPeripherinの発現
図2(右):成獣ラセン神経節におけるPeripherinとGata3の局在

加川主任研究員らがアミノ酸PET製剤MeAIBの基礎実験に関する原著論文を発表しました。

加川主任研究員らが執筆したアミノ酸PET製剤MeAIBの基礎実験に関する原著論文が英文医学誌であるNuclear Medicine and Biologyにonline掲載されました。

発表日 2017年1月18日
掲載雑誌名 Nuclear Medicine and Biology
著者 Shinya Kagawa, Ryuichi Nishii, Tatsuya Higashi, Hiroshi Yamauchi, Emi Ogawa, Hiroyuki Okudaira, Masato Kobayashi, Mitsuyoshi Yoshimoto, Naoto Shikano, Keiichi Kawai
表題 Relationship between [14C]MeAIB uptake and amino acid transporter family gene expression levels or proliferative activity in a pilot study in human carcinoma cells: comparison with [14H]Methionine uptake.
要旨

アミノ酸トランスポーターシステムAとシステムLのPETイメージングの違いを明らかにするため、これまでに我々は、[S-methyl-11C]-L-methionine ([11C]MET)によるアミノ酸トランスポーターシステムLとは異なる、α-[N-methyl-11C]-methylamino isobutyric acid ([11C]MeAIB)によるシステムAを標的にした放射性薬剤の開発を行ってきました。[11C]MeAIBは、アミノ酸トランスポーターシステムAに高い特異性を持ったPET薬剤であることが知られていますが、ヒト腫瘍培養細胞においてアミノ酸トランスポーターシステムAの機能を詳細に研究した報告はありません。そこで、ヒト腫瘍培養細胞におけるアミノ酸PET薬剤の集積量とアミノ酸トランスポーター遺伝子発現量及び細胞増殖能との関連について検討しました。

4種類のヒト腫瘍培養細胞集積実験において、[11C]MeAIBの主要な輸送経路は、アミノ酸トランスポーターシステムAであり、[14H]METと比較して特異性が高いことが確認されました。さらに、[14C]MeAIBの細胞集積量が、アミノ酸トランスポーターシステムAの遺伝子発現量や[3H]FLT集積量による細胞増殖能との相関性が認められたことから、アミノ酸トランスポーターシステムAを指標とした[11C]MeAIBによるPETは、腫瘍増殖活性の診断に有用である可能性が示唆されました。[11C]MeAIB-PETの臨床使用に関して、有益な情報を与えるものと期待されます。


山内副所長が第59回日本脳循環代謝学会学術集会で発表しました。

開催日 2016年11月12日
学会名 第59回日本脳循環代謝学会学術集会
開催地 徳島市
発表形式 シンポジウム口演
演者 山内浩
共同演者 加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章、東達也
演題 アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患における進行性大脳皮質神経細胞障害と慢性脳循環障害
要旨

【目的】脳梗塞が生じるより軽度の脳虚血により神経細胞に選択的な障害が起こる。 大脳皮質神経細胞表面に存在する中枢性benzodiazepine受容体(BZR)の低下は神経細 胞障害を示唆し、PET用のBZRトレーサー、11C-Flumazenilを用いて受容体密度を測定することで、神経細胞障害の程度をヒト生体で定量的に評価できる。これまでの横断的研究で、神経細胞障害と慢性脳循環障害の関連が示唆されている。本研究では、縦断的に神経細胞障害を評価し、神経細胞障害が進行するか、進行するな らベースラインの慢性脳循環障害の程度や経過中の脳循環障害の悪化と関連しているか検討した。

【方法】内頸あるいは中大脳動脈に狭窄または閉塞を有し、経過観察中に脳卒中発作のない患者80例を対象とした(症候性55例)。PETと11C-Fl umazenilおよび15O-Gasを用いて、BZR密度と脳循環代謝諸量を2回求めた。病変側中大脳動脈領域大脳皮質において,3-dimensional surface projectionと stereotactic extraction methodを用いて,abnormally decreased BZR index[(コントロールと比較して2以上のZスコアを呈するピクセルの範囲)と(そのピクセル のZスコア平均値)の積]を計算した(以下BZR index)。脳循環代謝諸量に関しては、軸断層画像上に関心領域を設定し、病変側半球大脳皮質平均値を求めた。

【成績】 平均26ヶ月の経過観察中に、BZR indexは、40例(50%)の患者で増加(神経細胞障 害の進行)した。多変量解析では、BZR index増加は、ベースラインの脳血流量低値 と経過観察中の酸素摂取率値の増加と関連していた。経過観察中の酸素摂取率値の増 加は、statinによる治療がないことと関連していた。

【結論】アテローム硬化性脳主 幹動脈閉塞性疾患患者において、進行性大脳皮質神経細胞障害は、ベースラインの脳循環障害の程度と経過中の脳循環障害悪化に関連していた。statinは脳循環障害の悪化を予防し神経細胞保護に働く可能性がある。


加川主任研究員が第56回日本核医学会学術総会にて発表しました。

開催日 2016年11月4日
学会名 第56回日本核医学会学術総会
開催地 愛知県名古屋市
演題 カセット式多目的合成装置を用いた[11C]PiB合成法の開発:ループ標識法とバブリング標識法の比較
演者 加川信也
共同演者 西井龍一、東達也、山内浩、川井恵一、渡邊裕之、木村寛之、小野正博、佐治英郎
要旨

アルツハイマー病での脳βアミロイドのゴールドスタンダードなイメージング剤である[11C]PiBの合成について、新たにカセット式合成装置を用いたループ標識法を開発し、従来のバブリング法で比較した。

ループ標識法による合成は、JFE社製カセット式合成装置を用いて、使い捨ての、ループ状滅菌チューブ(内径1mm x 長さ100cm)に少量のシクロヘキサノンに溶解した2-(4'Aminophenyl)-6-hydroxybenzothiazoleを自動注入して[11C]メチルトリフレートと反応させた。最終製剤は、固相抽出によって得られた[11C]PiBを含むエタノールを生理食塩液で希釈することによって得た。その結果、ループ標識法による[11C]PiBの合成は、カセット式合成装置にも応用可能であり、従来のバブリング標識法よりも合成の準備・後片付けが非常に簡便化され、今後、更なる普及が望まれる合成法であることが示された。


第5回びわ湖細胞病理テュートリアルを開催しました。

日時 2016年10月15日(土)13:00〜16日(日)12:00
場所 滋賀県立成人病センター研究所講堂 滋賀県守山市守山五丁目4番30号
テーマ 尿細胞診検体処理の標準化:LBCの有用性
対象 病理医、病理臨床検査技師、外科医等
座長 畠 榮 川崎医科大学附属川崎病院 病理部
佐藤 正和 国立病院機構 岩国医療センター
講師 高田 真未  MBL 株式会社 医学生物学研究所学術部 診断薬グループ
大橋 健太  ロシュ・ダイアグノスティックス株式会社
澤野 真理子 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社ダイアグノスティックシステム事業部
杉本 直美  ホロジックジャパン株式会社
田近 洋介  富山県済生会富山病院
三村 明弘  大阪労災病院
池本 理恵  エスアールエル福岡ラボラトリー 九州検査部
有安 早苗  国立病院機構岡山医療センター 病理部
小椋 聖子  大阪府済生会野江病院
田中 陽一  東京歯科大学 市川総合病院臨床検査科病理検査室長
河原 明彦  久留米大学病院病理部
藤田  勝   岡山大学病院
定員 100名(事前申込みが必要です)
会費 5,000 円(ハンドアウト代を含む)
申込方法 参加をご希望の方は E-mail または FAX でお申し込み下さい。その時、タイトルを「第5回びわ湖細胞病理テュートリアル参加申込み希望」とし、氏名(ふりがな)・所属・連絡先の住所・電話番号・FAX番号・E-mail アドレス、懇親会参加の有無をお書き添え下さい。確認後、振り込み方法などの詳細なご案内をお送り致します。なお、1日目終了後懇親会を行いますので、多数ご参加ください。(実費)
連絡先 TEL: 077-582-6034, FAX: 077-582-6041, E-mail: kenkyu@res.med.shiga-pref.jp
主催 滋賀県立成人病センター
共催 滋賀県
後援 滋賀県臨床細胞学 細胞検査クレジット申請中
チラシ チラシ(PDF:別ウィンドウで開きます)

加川主任研究員が京都大学等と共同で、有機アニオントランスポーターの機能解析を目的とするPET製剤に関する原著論文を発表しました。

加川主任研究員が京都大学等と共同で執筆した有機アニオントランスポーターの機能解析を目的とするPET製剤:[18F]標識ピタバスタチン誘導体([18F]PTV-F1)に関する原著論文が英文医学誌であるJournal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticalsにonline掲載されました。

薬物代謝の主要部位である肝臓に存在し、肝取込みを行うトランスポーターである有機アニオントランスポーター(OATP:organic anion transporting polypeptide)の機能は、薬物間相互作用や遺伝子多型によって個人差が生じ、その機能の解析は非常に有効と考えられます。今回、ピタバスタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)の誘導体であるF-18標識化合物(18PTV-F1)の臨床での使用に向けて、標識合成法を確立しました。

発表日 2016年9月6日
掲載雑誌名 Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals
著者 Hiroyuki Kimura, Yusuke Yagi, Kenji Arimitsu, Kazuya Maeda, Kazuaki Ikejiri, Jun-ichi Takano, Hiroyuki Kusuhara, Shinya Kagawa, Masahiro Ono, Yuichi Sugiyama and Hideo Saji
表題 Radiosynthesis of novel pitavastatin derivative ([18F]PTV-F1) as a tracer for hepatic OATP using a one-pot synthetic procedure
要旨 Pitavastatin is an antihyperlipidemic agent, a potent inhibitor of 3-hydroxymethyl-glutaryl-CoA reductase, which is selectively taken up into the liver mainly via hepatic organic anion transporting polypeptide 1B1 (OATP1B1). OATP1B1 can accept a variety of organic anions, and previous reports indicated that it is responsible for the hepatic clearance of several clinically used anionic drugs. Therefore, the pharmacokinetics and the hepatic distribution of pitavastatin provide an insight into the function of OATP1B1 in humans. For the development of the in vivo evaluation of OATP1B1 function by positron emission tomography imaging, we designed a novel [18F]pitavastatin derivative ([18F]PTV-F1), in which a [18F]fluoroethoxy group is substituted for the [18F]fluoro group of [18F]pitavastatin, with the aim of convenient radiolabeling protocol and high radiochemical yield. In vitro studies suggested that transport activities of PTV-F1 mediated by OATP1B1 and OATP1B3 were very similar to those of pitavastatin and PTV-F1 was metabolically stable in human liver microsomes. In the radiosynthesis of [18F]PTV-F1 from the tosylate precursor, nucleophilic fluorination and subsequent deprotection were performed using a one-pot procedure. [18F]PTV-F1 was obtained with a radiochemical yield of 45% ± 3% (n = 3), and the operating time for the radiosynthesis of [18F]PTV-F1 is very short (30 minutes) compared with [18F]pitavastatin.

第52回滋賀県立成人病センター研究所セミナーを開催しました。

開催日時 2016年6月27日(月)17時15分~18時15分
場所 滋賀県立成人病センター研究所会議室
演題 下丘において音刺激により惹起される可塑的神経活動性変化
演者 小野 宗範 先生(金沢医科大学・医学部・生理学1 講師)
要旨 神経細胞は可塑的に活動性を変化させる性質(可塑性)をもち、脳内での動的な情報処理や記憶の形成を実現していると考えられている。今回、中枢聴覚情報の総合処理の起点である下丘において、一部の細胞がこれまで知られてこなかった可塑性を持つことを発見した。下丘神経細胞は音入力に対して様々な応答活動を示すことが知られているが、約20%ほどの細胞は秒単位の時間内に、音刺激により引き起こされる活動に応じて自らの活動性を変化させることを見出した。この結果から、下丘神経細胞は刻一刻と変化する音環境に対応して、動的に活動性を変化させながら音情報を伝達している可能性が示唆された。
世話人 西村 幸司
案内チラシ PDFファイル

当センター画像研究部門の開発した日本発のアミノ酸系PET製剤MeAIBの臨床診断に関する原著論文が英文医学誌 Annals of Nuclear Medicineにonline掲載されました。

日本核医学会が発行する英文医学誌・Annals of Nuclear Medicineの最新号がonline出版され、有本麻耶共同研究員(京都大学在籍)、東達也元総括研究員(現量子科学研究機構放射線医学総合研究所)を始めとする当センター画像研究部門が執筆した論文が掲載されました。国内で腫瘍診断に用いられているPET製剤は糖代謝を用いたFDGのみが保険収載されていますが、尿路系腫瘍の領域では尿への生理的排泄像などで偽陽性などが見られることも多く、post FDGのPET製剤が求められています。MeAIBは当研究所の加川研究員が中心となり我が国で初めて薬剤合成に成功したアミノ酸系PET製剤で、尿路への排泄が少なく、FDG-PETやFDG-PET/CTで診断に苦慮する尿路系疾患で良悪性鑑別に威力を発揮するものと期待される人工アミノ酸PET製剤です。今回、前立腺癌を対象にPET診断を行い、FDGを凌駕する診断能を示したことが評価され、掲載が決まりました。

掲載日 2016年6月21日
掲載雑誌名 Annals of Nuclear Medicine. 2016 June 21. [Epub ahead of print]
出版:日本核医学会
著者 Maya K. Arimoto, Tatsuya Higashi, Ryuichi Nishii, Shinya Kagawa, Masaaki Takahashi, Yoshihiko Kishibe, Hiroshi Yamauchi, Satoshi Ishitoya, Hiroyuki Oonishi, Yuji Nakamoto, Kaori Togashi.
標題 11C-methylaminoisobutyric acid (MeAIB) PET for evaluation of prostate cancer: compared with 18F-fluorodeoxyglucose PET.
要旨

新規に出現した前立腺癌34例の診断を目的に検討した。病変の病期およびGleason scoreの内訳はstage 2: 23例、stage 3: 8例、stage 4: 3例、G score 6: 13例、G score 7: 16例、G score 8: 3例、G score 9: 2例。同一症例に対してFDGおよびMeAIBを用いたPETかPET/CT、さらにMRIを一度づつ行い、その診断能を比較対照した。

結果: 腫瘍への集積はMeAIB, FDGそれぞれSUVmaxの平均値で3.18 (±1.90, range; 1.55–9.57) and 3.88 (±2.85, range; 2.04–14.47)だった。MeAIB, FDGの診断は相補的な関係を示した。患者別の診断能(鋭敏度)はMeAIB: 51.6%、FDG:48.4%、MRI:56.7%で、MeAIBはFDGよりも高かったが、MRIにはやや劣る結果だった。特異度は全診断modalityで同じく100%だった。

結論:MeAIBを用いたPETやPET/CTは前立腺癌の診断において有用で、FDGの診断は相補的な関係を示して、高い特異度を有し良好な診断能を示したが、MRIとの併用が望ましいと考えられた。


山内副所長らが執筆した進行性大脳皮質神経細胞障害に関する論文が Stroke 誌にonline掲載されました。

アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者では、脳循環障害により大脳皮質神経細胞が症状なく死んでいくことをPETを用いて初めて明らかにしました。脳梗塞が生じるより軽度の脳虚血により神経細胞に選択的な障害が起こります。大脳皮質神経細胞表面に存在する中枢性benzodiazepine受容体(BZR)の低下は神経細胞障害を示唆し、PET用のBZRトレーサー、11C標識フルマゼニルを用いて受容体密度を測定することで、神経細胞障害の程度をヒト生体で定量的に評価できます。本研究では、縦断的に神経細胞障害を評価し、神経細胞障害の進行が慢性脳循環障害と関連して起こることを証明しました。

図:脳循環障害の悪化に伴う神経細胞障害の進行
脳循環障害の悪化に伴う神経細胞障害の進行

右中大脳動脈閉塞症で,上の初回検査時,MRIでは右深部境界領域梗塞(矢印)があり、梗塞のない閉塞側(右)大脳皮質で軽度ベンゾジアゼピン受容体(BZR),血流,および酸素代謝の低下を認めるが,酸素摂取率のあきらかな上昇はない.2段目は,内科的治療で経過観察し,15ヶ月後の画像で,再発作はない.閉塞側大脳皮質で,BZRが低下しており(矢印),血流低下と酸素摂取率増加,すなはちmisery perfusionが明らかに認められる.下は,BZRの脳表分布とZスコアマップの変化で,閉塞側でBZR低下とZスコア増加(神経細胞障害の進行)(矢印)が明らかである.自覚されずに進行する虚血性神経細胞障害を防ぐために、脳循環障害の正確な評価と悪化を防ぐ治療が必要です。本研究では、コレステロールを低下させる薬剤、スタチンが有効であることも示しました。

掲載日 2016年5月6日
掲載雑誌名 Stroke 2016; first published on May 5 2016 as doi:10.1161/STROKEAHA.116.013093 (html / pdf)
著者 Hiroshi Yamauchi, Shinya Kagawa, Yoshihiko Kishibe, Masaaki Takahashi, and Tatsuya Higashi
表題 Progressive Cortical Neuronal Damage and Chronic Hemodynamic Impairment in Atherosclerotic Major Cerebral Artery Disease
要旨

Background and Purpose—Cross-sectional studies suggest that chronic hemodynamic impairment may cause selective cortical neuronal damage in patients with atherosclerotic internal carotid artery or middle cerebral artery occlusive disease. The purpose of this longitudinal study was to determine whether the progression of cortical neuronal damage, evaluated as a decrease in central benzodiazepine receptors (BZRs), is associated with hemodynamic impairment at baseline or hemodynamic deterioration during follow-up.

Methods—We evaluated the distribution of BZRs twice using positron emission tomography and 11C-flumazenil over time in 80 medically treated patients with atherosclerotic internal carotid artery or middle cerebral artery occlusive disease that had no ischemic episodes during follow-up. Using 3D stereotactic surface projections, we quantified abnormal decreases in the BZRs in the cerebral cortex within the middle cerebral artery distribution and correlated changes in the BZR index with the mean hemispheric values of hemodynamic parameters obtained from 15O gas positron emission tomography.

Results—In the hemisphere affected by arterial disease, the BZR index in 40 patients (50%) was increased during follow-up (mean 26±20 months). In multivariable logistic regression analyses, increases in the BZR index were associated with the decreased cerebral blood flow at baseline and an increased oxygen extraction fraction during follow-up. Increases in the oxygen extraction fraction during follow-up were associated with a lack of statin use.

Conclusions—In patients with atherosclerotic internal carotid artery or middle cerebral artery disease, the progression of cortical neuronal damage was associated with hemodynamic impairment at baseline and hemodynamic deterioration during follow-up. Statin use may be beneficial against hemodynamic deterioration and therefore neuroprotective.


山内副所長が第41回日本脳卒中学会総会で発表しました。

発表日 2016年4月16日
学会名 第41回日本脳卒中学会総会
開催地 札幌市
発表形式 口演
演者 山内浩
共同演者 東達也、加川信也、岸辺喜彦、高橋昌章、西井龍一、水間 広、高橋和弘、尾上浩隆
演題 慢性脳虚血患者における18F-fluoroacetate PET: 虚血性障害の高リスク領域を描出
要旨

【目的】[18F]-fluoroacetate (18F-FACE)は、グリア代謝を評価可能と考えられるPET薬剤である。げっ歯類では、脳虚血モデルで18F-FACEの取り込み増加が報告されている。18F-FACEの画像化により虚血性組織障害の高リスク領域を描出できる可能性があるが、ヒトでの評価はまだない。本研究では、慢性期アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者で、18F-FACEの取り込みと脳循環代謝諸量との関係を検討した。

【方法】一側性症候性アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者9例(内頸動脈:頭蓋外閉塞4例,頭蓋内閉塞1例,中大脳動脈:閉塞2例,狭窄2例;mRS≦2)を対象とし、慢性期に、15O-gasと18F-FACEを用いたPET検査を行なった。大脳皮質に梗塞を認めない例である。中大脳動脈大脳皮質に関心領域を設定し、半球平均値を求めた。18F-FACEの取り込みは、投与後40-60分の画像を用い、血管病変側/健常側取り込み比を解析した。

【成績】全体として、病変側大脳皮質では、健常側と比較して、血流量、酸素代謝率、および血流量/血液量比は低下し、酸素摂取率と血液量は増加していたが、18F-FACEの取り込みは増加していた。18F-FACEの病変側/健側取り込み比は、血流量、酸素代謝率と負相関し、酸素摂取率と正相関した。多変量解析では、18F-FACEの取り込み比増加は、血流量低下(あるいは酸素摂取率増加)および酸素代謝率低下と独立して関連していた。

【結論】アテローム硬化性脳主幹動脈閉塞性疾患患者で、貧困灌流と酸素代謝低下を呈する、梗塞のない大脳皮質において、18F-FACEの取り込みが増加していた。18F-FACEの取り込み増加は 、貧困灌流領域で酸素代謝低下を呈する、特に虚血性組織障害のリスクの高い領域を描出している可能性がある。