遺伝子研究部門

スタッフ

木下 和生専門研究員 木下 和生(きのした かずお)
専門 腫瘍学、免疫学、分子生物学
略歴 平成4年京都大学医学部卒業、平成4年-6年内科研修医(京都民医連民医連中央病院、吉祥院病院)、平成6年-9年京都大学大学院医学研究科分子生物学講座(大学院生)、平成9年-15年同医学研究科助手  平成15年-平成17年京都大学医学研究科先端領域融合医学研究機構特任助教授
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ヒトゲノムが解読されてから10年を経た今、ゲノムの網羅的解析がもたらした医学上の成果が爆発的な勢いで臨床に還元され、健康増進に役立てられつつある。この流れに沿った病院と連携した臨床研究を展開している。骨髄増殖性腫瘍におけるJAK2遺伝子の解析、および、大腸癌のKRAS遺伝子変異検査法に関する研究が進行中で、それ以外にも臨床との共同研究を募集している。臨床研究を通したゲノム情報を活用した医学の実践を目指している。
がんの発生に伴う遺伝子異常がどのようにして起こるのかを研究している。がんの遺伝子異常がAIDという遺伝子を変化させる酵素によって引き起こされているという仮説を証明するため、臨床検体や動物モデルをもちいた実験をおこなっている。
がんの発生に伴う染色体転座のメカニズムを解明するため、染色体を任意に操作できる染色体手術法を開発し、それを用いた染色体研究を進めている。

主な論文 [表示/非表示の切替]
  1. Uemura M, Niwa Y, Kakazu N, Adachi N, Kinoshita K. Chromosomal manipulation by site-specific recombinases and fluorescent protein-based vectors. PLoS One 5: e9846, 2010.
  2. Takai A, Toyoshima T, Uemura M, Kitawaki Y, Marusawa H, Hiai H, Yamada S, Okazaki IM, Honjo T, Chiba T, Kinoshita K. A novel mouse model of hepatocarcinogenesis triggered by AID causing deleterious p53 mutations. Oncogene 28: 469-478, 2009.
  3. Kinoshita K, Nonaka T. The dark side of activation-induced cytidine deaminase: relationship with leukemia and beyond. Int J Hematol 83: 201-207, 2006.
  4. Okazaki IM, Hiai H, Kakazu N, Yamada S, Muramatsu M, Kinoshita K, Honjo T. Constitutive Expression of AID Leads to Tumorigenesis. J Exp Med 197: 1173-1181, 2003.
  5. Kinoshita K, Honjo T. Linking class-switch recombination with somatic hypermutation. Nat Rev Mol Cell Biol 2: 493-503., 2001.
  6. Muramatsu M, Kinoshita K, Fagarasan S, Yamada S, Shinkai Y, Honjo T. Class switch recombination and hypermutation require activation-induced cytidine deaminase (AID), a potential RNA editing enzyme. Cell 102: 553-563, 2000.
  7. Kinoshita K, Tashiro J, Tomita S, Lee CG, Honjo T. Target specificity of immunoglobulin class switch recombination is not determined by nucleotide sequences of S regions. Immunity 9: 849-858, 1998.
HP 木下研究室(外部サイト) 外部リンク
臨床検査技師 植村 宗弘(うえむら むねひろ)

遺伝子研究部門の研究概要

遺伝子研究部門は遺伝病の解析、遺伝子の保存と活用、他部門の遺伝研究支援、P3施設の管理を行う部門です。

がん細胞を生む遺伝子変異が生じるメカニズムの解明を行い、がんの予防と治療に役立つ成果を目指していきます。また、臨床各科や各部門と協力して、臨床的な研究をさらに展開し、大学では行いにくい、研究所の機動力を生かした臨床研究のサポートを行っていきたいと考えています。

その一例として平成22年度から外科、病理部と共同で行う大腸癌の臨床検体を用いた遺伝子変異解析についての予備的な実験をスタートさせています。また、知的財産を公開し社会に貢献する取り組みも積極的に行っていく予定です。その一例として大腸癌遺伝子変異解析の実験から得られた新規技術について現在特許を申請中です。

癌における遺伝子異常の解明とその臨床への応用

(1)骨髄増殖性腫瘍(MPN)患者におけるJanus kinase 2遺伝子(JAK2)V617F変異測定の有用性

骨髄増殖性腫瘍は赤血球や血小板が増加する血液腫瘍ですが、JAK2遺伝子の変異が高頻度で認められることから、その測定が診断の上で重要になっています。研究所ではJAK2遺伝子の変異の有無だけでなく、血液中のDNAのうちどれくらいの割合で変異したDNAが存在しているかを測定する方法を独自に確立し、変異したDNAの割合が治療への反応や合併症の出現に関係しているかどうか研究しています。また、JAK2遺伝子の変異が腫瘍を導くメカニズムについての研究を行い、診断や治療法の改善を目指しています。

(2)大腸直腸癌におけるKRAS変異のレーザーマイクロダイセクションによる検出

大腸直腸癌の約4割に見つかるKRAS遺伝子の変異は抗がん剤の効果を予測する上で重要であり、平成22年度からKRAS遺伝子検査に健康保健が適応されている。研究所ではより正確な遺伝子診断を提供することを目的として、レーザーマイクロダイセクション顕微鏡を用いて、癌細胞だけを切り取り、周辺の正常細胞が混入しないやり方でKRAS遺伝子検査を行う方法と、レーザーマイクロダイセクションによらない方法を比較検討しています。

疾病の遺伝的基盤の探究

(1)突然変異誘導因子AIDによる発がん機構の研究

突然変異を起こす活性を持つAIDという酵素は本来抗体の遺伝子に作用してその多様性を増す働きをもっていますが、マウスの実験で過剰に働かせるとがんを引き起こすことが分かりました。ヒトでもピロリ菌に感染した胃や肝炎ウイルスに感染した肝臓の細胞でAIDが産生され、遺伝子の変異を引き起こすことが分かり、がんの原因になっている可能性が示唆されました。新たながん治療・予防法の開発に向けて、AIDによる発がん機構の解明を目指しています。

発がんのメカニズム1

(2)発がんに関わる染色体転座の分子機構の研究

染色体転座はある染色体と別の染色体が途中でつなぎ変る現象であり、がんの原因になることが知られていますが、どのようにして転座が生じるのかについてはよく分かっていません。転座がおこる背景として、細胞核内における遺伝子の空間的配置が重要と考えられています。ある遺伝子と別の遺伝子の距離がどれくらいはなれているかを生きた細胞で測定できる手法を開発し、染色体転座のメカニズムを解明することを目指しています。

発がんのメカニズム2

研究業績

業績はこちらをご参照ください。